レンヌでの治験での死亡事故

Bonjour !

昨年1月に起きた治験での死亡に興味を引かれたので、やや古いですが取り上げます。
これはレンヌのBiotrialという治験センターが実施した鎮痛薬の分子標的薬(BIA 10-2474)-- fatty acid amide hydrolase (FAAH) inhibitors--の第1相試験で、1人が脳死になり1月17日に死亡、5人に重大な神経障害がおきたという事故です。この治験薬は、ポルトガルのBialという製薬会社がフランスのBiotrialに依頼したものです。第1相試験といいますから、実験動物での前臨床試験のあとに健康な成人に対して行われる段階です。動物と人間とでは効果が違いますから、人間では初めての試験となり、それなりのリスクは伴うものと推測されますが、これほどのリスクを伴うものかと疑問になって詳しく読みました。投薬後に気分が悪くなったり、不調があったときは、いつでも傍に看護師か医師がいて適切な措置が取られ、場合によっては治験参加の中止もできるはずですからね。

フランスではこの事故を重大視し、ANSM(医薬品安全庁)によってCSST(事故調査委員会)が設けられ、4月19日に調査結果をまとめた報告書が提出されました。
それによると、「治験された薬は欧州の基準に照らし合わせて、それほどリスクの大きいものではありえなかったし、ポルトガル側から提出されたデータには有毒性について、人間に対する投与に関して懸念がもたれるものではなかった」ということです。
この治験の実施を認可したことに責任があるのか、それとも治験を実施したセンターに責任があるのか、専門的なデータの解釈も必要になりますから、なかなか難しい問題です。
治験では投与量を徐々に増やしていきますが、脳死が起きたのも投与量が50mgに増量された段階で、それより少ない投与量でもいろいろと副作用が出ていたようです。CSSTは結論としてこの点を、« Mode de progression trop brutal »と表現しています。投与量の増量の過程が急激すぎたという意味です。

調査報告についてのLe Mondeの記事

http://www.lemonde.fr/sante/article/2016/04/19/essai-clinique-a-rennes-la-mort-d-un-volontaire-est-clairement-liee-a-la-molecule-testee_4905071_1651302.html

1年後のBiotrialの再建努力

http://www.20minutes.fr/rennes/1995387-20170116-essai-clinique-rennes-an-apres-biotrial-peine-relever

死亡した方についての記事

http://www.lejdd.fr/Societe/Sante/Essai-clinique-Guillaume-cobaye-mort-pour-1-900-euros-769703

最後に米国FDAのBIA 10-2474についての見解

http://www.fda.gov/Drugs/DrugSafety/ucm482740.htm

余談ですが、かの有名なパスツールがブラジルの皇帝宛に書いた手紙で、死刑執行前日に囚人に狂犬病ワクチンの被験者となるか、死刑執行かの選択肢を与えるのはどうかと提案しているんですね。なかなか興味深い逸話です。この結果はどうなったのか、さらに調べないと分かりません。

Bon week-end !
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